「魔女の宅急便」」といえば、言わずと知れたジブリの大ヒットアニメ映画です。
キキという少女の成長と思春期のころの心の動きを描いた、キュートでどこか共感の持てる映画です。
そんな超有名作品ですが、このタイトルに問題があるって気づいていましたか?
というか、タイトルは原作と一緒なので、ジブリだけにとどまらないことなのですが。
そこには、こちらもまた有名な企業クロネコヤマトのヤマト運輸が関わっているようなのです。
その辺りの真相や経緯などに注目してみました。
魔女の宅急便とクロネコヤマトは「宅急便」で揉めていた
問題点というのは、タイトルに入っている「宅急便」という言葉です。
実はこの言葉は、ヤマト運輸が1976年に宅配サービスを開始するにあたって名付けたサービスの名称で、商標登録された言葉だったのです。
この商標登録がされてあるものというのは、基本的に無断利用してはいけないという法律があり、破れば賠償問題や裁判沙汰など大きな問題になってしまうものです。
もちろんジブリだって原作の出版元だって、そのような法律には気をつけていたはずです。
でも実際、映画の公開を間近に控えた時期にこの大問題は急浮上しました。
原作の角野さんも宮崎駿監督ですら知らなかったこの事実ですが、ヤマト運輸から「宅急便」という言葉の利用に待ったがかかったというのが事の真相です。
揉めたという表現は大げさすぎますが、ジブリにとって天変地異だったことは間違いないでしょう。
今さらタイトルの変更もあり得ないし、かといって映画が公開できなくては元も子もないしという状況です。
急に大きな壁にぶつかり、みんな頭を抱えたという感じだったと想像できます。
魔女の宅急便とクロネコヤマトの「黒猫」は偶然被った⁉
解決した経緯の前に、一つキキの相棒が黒ネコであることの謎を解決しておきたいと思います。
この「宅急便」という言葉の利用問題があったから黒いネコになったのではと勘違いする方も多いと思いますが、これは全くの偶然なのです。
原作の時点から、キキの相棒のネコは黒でした。
というのも、魔女のパートナーは黒いネコと定められていて、それは魔女の家系のしきたりのひとつに「生まれた時期が同じオスの黒猫を一緒に育てる」とあるからです。
このしきたりは、古代エジプトの神バステトに由来するというものや、中世のヨーロッパではひとり暮らしの女性が黒の猫を飼っていたことに由来するというものなど諸説あります。
なんにせよこれは後付けされたものではなく、魔女のしきたりを忠実に描いただけということなのです。
では逆に、ヤマト運輸が名前に取り入れるほどになった、そのマークの過程にも理由がありました。
そもそもアメリカの運輸業者アライド・ヴァンライズのマークが、子猫をくわえて運ぶ親ネコをマスコットマークとしていました。
そこには「荷物を安全に運ぶ」という理念が込められており、ヤマト運輸初代社長の小倉康臣さんがその理念にとても共感したといいます。
http://trcuktrivia.blog.fc2.com/blog-entry-167.html
それで、アメリカのその会社に許可をもらい、そのマークをベースにロゴマークにしたのだそうです。
その際、様々な案が持ち上がる中デザイン担当の娘さんが描いた、黒いネコが子猫をくわえている絵というのが採用され今の形となったわけです。
ですから、キキの相棒ジジとヤマト運輸の黒ネコは、全く関係のない意味も違う二つの黒ネコが偶然被っただけということです。
魔女の宅急便のスポンサーになったクロネコヤマト
急にもち上がった「宅急便」という言葉が使えない問題。
まさか!と関係者一同、慌てたことだと思います。
でも、今もタイトルにその言葉は使われていることからも分かるように、ある提案でその問題は解決します。
提案が、ジブリからだったのかヤマト運輸からだったのかは様々な説がありますが、ヤマト運輸が映画のスポンサーに就くという案でした。
スポンサーの会社が権利を持つ言葉であれば、それをタイアップとして映画のタイトルに使用しても問題にならないと踏んだのです。
結果、その提案が取り入れられて、無事に映画も放映されクロネコヤマトの宅急便も宣伝でき、良い形で解決しました。
そしてその実現の裏には、黒ネコという偶然の共通点が関係しているという話もあるのです。
というのも当初ヤマト側は、トトロの映画が赤字だったと聞いていて、もし魔女の宅急便も赤字となればスポンサーとなった自社のイメージダウンになると危惧したのです。
なので、その提案が名案だと分かりつつも踏み切れずにいました。
そんな時、魔女の宅急便にも黒ネコが出演していることを知り、しかも主人公の相棒である事を知ります。
自社のマスコットマークであるクロネコの親子との偶然の一致に、きっと運命を感じたはずです。
背中を押されるかたちとなって、その案にとても前向きとなったということなのです。
スポンサー契約によって商標権の問題も解決しジブリも無事に映画公開でき、ヤマトもクロネコヤマトの宅急便を大いに宣伝できました。
しかも映画の大ヒットによって、イメージアップどころか、宅急便というサービスが広く世の中に知れ渡ることになり、両者にとってwin winとなりました。
一件落着となった今回の件の立役者は、両社の黒ネコちゃんたちだったといって過言ではないようですね。
魔女の宅急便の原作はなぜお咎めなしなのか
ここで一つ疑問に思った方も多いかもしれませんが、原作の方もタイトルは同じだけど商標権は大丈夫だったのかということです。
結果から言うと何一つお咎めもなく、しかも、その後の作品においても「宅急便」という言葉について問題にあがることはありませんでした。
https://ameblo.jp/mi-1125-ho/image-12124927725-13558045560.html
こちらも、商標登録されていたとは知らなかったわけですし、映画の元となった作品なわけですからその対応も納得です。
でもそもそもヤマトからのストップが、原作本の出版のときにではなく映画公開のときにかかったのはなぜなのかと改めて疑問に思ってしまいます。
実は厳密にいうと、映画や書籍のタイトルに商標登録された言葉を使用しても、法律的には何も問題はないのです。
にも関わらず、待ったをしたのには本当の理由がありました。
当時、ちょうど宅配というサービスが知られてきた頃で、これからという時期で会社のイメージダウンにつながるようなことを極力避けたいと考えていました。
なので、「宅急便」という同じ言葉を使ったジブリ映画がもしヒットしなかったら、連想される宅配サービスにも影響が出ると考えたのです。
とはいえ世間の認知度の高いジブリに、ただイメージが下がると嫌なのでなんてクレームをつければ、それこそ確実に会社のイメージダウンとなります。
そこで商標登録という大義名分を持ち出し、万が一の場合ヤマトにも影響が出ることをジブリに相談したといったところです。
でも、結果的にはそれは取り越し苦労で映画は大ヒットしました。
スポンサーとなったクロネコヤマトの宅急便も、より幅広い世代や地域に知られることとなり、「宅急便」という言葉が根付きました。
原作ももちろん問題なくこのタイトルを使えてますし、全部丸く収まったということですね。
まとめ
たまたま使った言葉の商標権問題からスポンサー契約に、黒ネコという意外な共通点。
真実は小説より奇なりとはまさにこの事と言える、魔女の宅急便とクロネコヤマトの宅急便の騒動でした。
https://dic.nicovideo.jp/a/%E9%AD%94%E5%A5%B3%E3%81%AE%E5%AE%85%E6%80%A5%E4%BE%BF
とはいえ、この一連の出来事があったからこそ、映画の大ヒットとともに現在の宅配サービスが定着したとも言えるかもしれませんね。
そんな中、公開に合わせて作られたポスターがとてもほっこりするのです。
こちらも実は好評で、宣伝効果に一役買ったなと思えるものです。
それは、キキとジジが窓から外を眺めている絵に「こころを暖かくする宅急便です」というキャッチフレーズが載っているポスターです。
当時、映画の公開と共に、クロネコヤマトの宅急便取り扱い店店頭に貼り出されました。
ここから、「届け物を安全に運ぶ」「品物と一緒に色々な想いも届ける」という会社の理念が伝わりました。
そして、映画のキキの日常とも重なり、配達する人も人間なんだなという心の通うモノが伝わったようです。
現代では、もしかしたらドローンで荷物を運ぶなんてこともあり得そうですが、人間が運ぶということの意味というのもありそうですね。
コメント
コメント一覧 (2件)
>ジブリにとって天変地異だった
天変地異じゃなくて、青天の霹靂かな。
>ジブリにとって天変地異だった
天変地異じゃなくて、青天の霹靂かな。