雫の父、月島靖也といえば、作成した資料の文章が抜けていたり自分の出勤日をわすれていたりとちょっと抜けたところのある人ですよね。
そんなところを見ると、父親業をなんとかやってはいるけれど、どことなく頼りなさも感じてしまいます。
でも実は、とても気持ちが穏やかで落ち着いた人柄でもあって、子供のことを頭ごなしに怒ることはしませんね。
本人の話をしっかり聞き、意見や主張に耳を傾けるところなどは見習いたいと思える部分でもあります。
45歳で図書館司書で働く父親でありつつ本業は郷土史家という、自分のやりたい事にも情熱を注ぐ月島靖也。
担当した声優さんやそこから作られる父親像人物像など、月島靖也のキャラ作りについて迫ってみます。
雫のお父さんの声優は誰?
雫の父、靖也の声を担当したのは、立花隆さんです。
この方は芸能関係の方ではなく、ジャーナリストでノンフィクション作家としてとても著名な方です。
その取材力と読書量から「知の巨人」とまで言われ、伝達者としてあらゆる面において活躍されています。
東大卒で文藝春秋入社という、華々しい経歴の持ち主であることは広く知られています。
1974年には、文芸春秋から「田中角栄研究ーその金脈と人脈」を発表します。
これが、田中内閣退陣の契機になったともいわれていて、いかに影響力があったかも伺うことができます。
そんなアニメとは程遠いところにいるような方が、なんで雫のお父さんの声優にと不思議に思いますよね。
きっかけは、スタジオジブリの勉強会だったようですよ。
スタッフ全員を集めたこの勉強会で講師として登壇したのが、立花隆さんでした。
おそらくその際の語り口調や訛りなど、印象深いものがあったのでしょう。
雫のお父さん役の声優を検討するにあたって、白羽の矢が立ったということなのです。
ジブリは、要所要所をプロの声優さんではなく俳優さんやタレントさんに依頼することが多く、お家芸ともいえるかと思いますが。
それにしても、この配役は異例な事だったに違いありません。
雫のお父さんの訛りは茨城弁だった!
雫のお父さんが所々出る訛りは、茨城弁です。
もともとの設定で、雫のお父さんの口調は標準語だとつまらないということで、地方の言葉を使おうとしていたようです。
それが最初から茨城弁だったのか、それともお父さん役の声優となった立花さんが茨城弁だったからなのかは定かではありません。
ただ、創り上げた方言ではなく、立花さんが幼少期に身に染み混んだ訛りだったので、雫のお父さんのイメージ通りだったのかもしれませんね。
ジブリのプロデューサー曰く、上手い下手は関係なく茨城県の水戸の訛りが欲しかったとあります。
お父さん役は立花さん以外にはあり得ない、はまり役だったのではないでしょうか。
はまり役通りという観点でいえば、立花さんなら自分の好きなことにまい進する現代の父親を演じきれそうだったといいます。
ノンフィクション作家として様々な活動を続ける立花さんと、図書館司書をしながらも郷土史研究に没頭する父・靖也が重なる部分もあったようです。
雫のお父さんが棒読みの理由は
声優の教育を受けていない素人が発するセリフですから、棒読みな感じになってしまうのは否めません。
そこには、やはり賛否両論あるようです。
でも、ジブリ映画においては、トトロや風立ちぬなど、多くの作品でそのような演出を試みています。
プロの創り上げた上手いセリフの言い回しより、素人で棒読みでナチュラルな訛りがある方が、人間っぽくてリアリティがあるという宮崎駿監督のこだわりを感じます。
ちょっとした日常を丁寧に描くジブリにとって、観ているこちら側にもストンと入ってくる演出を目指しているのだと感じられます。
そして雫のお父さんという役としては、一昔前の父親という重厚さを出したかったと言います。
どんな素晴らしいプロでも、発する声の奥にある人生の重みや知性の厚みは簡単に出せるものではありません。
経験値や学んだことの豊富さから醸し出すものを、わざとではなく自然に発せらることを望んだのだと思われます。
まとめ
雫の父・靖也は、ちょっと抜けたところもあって頼りなさを感じるものの、穏やかで子供の意思もしっかり聞き受け止めることのできる人物です。
それを表現するには、茨城水戸の方言と父親の重厚さを持つ口調、好きな事を突き詰める芯と深い経験や知識を持ち合わせた声優さん。
それが、必要だったのだと思います。
しかも、たわいもない日常のひとコマにリアリティやナチュラルさが持てるよう、プロのテクニックのない方が求められます。
立花隆さんのお父さん役は、まさにイメージ通りの適役ですね。
そのせいか、靖也が雫からの、今はまず勉強より小説を仕上げる事を優先したいという申し出を受けての返答に重みを感じます。
「よし、雫。自分の信じる通りやってごらん。でもな、人と違う生き方はそれなりにしんどいぞ。何が起きても誰のせいにもできないからね。」
完璧ではない人間味も醸し出しながら、威厳のある父親だということがしっかり伝わってきます。
そして、その言葉が意味することがいかに重要で、年齢と経験を重ねた父親だから言える言葉であるかも、自然と伝わってきます。
月島靖也というお父さんは、たしかにここにいる気がしてしまいますね。
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