キキが、トンボのパーティーに遅れ、雨に濡れて体調も崩して自信までなくしてしなう原因となったニシンのパイの一件。
依頼してきたおばあさんというのは、親切で気遣いのできるとても素敵なご婦人でした。
ですからパイの届け先の孫娘さんも、てっきり上品な感じの可愛らしい子が出てくるかと思っていました。
たぶん、そんな風に予測していた人は多かったと思います。
でも出てきた孫娘さんは、キキに向かってなんと「このパイ嫌いなのよね」発言。
あまりの予想とのギャップに、びっくり仰天してしまいましたが。
この孫娘さんの対応っぷりには、世間のみなさんもさまざまな意見があるようです。
また宮崎駿監督としてもこの場面には、監督なりのなにやら思惑が込められているようです。
その辺りとトンボとの関係、キキとのその後の関係などにも迫ってみたいと思います。
ニシンのパイを嫌いと言った少女に世間では否定的な声!
昭和のアニメではよくいた、いじめっ子キャラかと思うくらい心根の悪いヤツに映ったこの孫娘さん。
どうやら多くの方たちの感想も、「この子最低ー!」というものだったようです。
そう感じた理由には、孫娘さんがキキに放った言葉3つにあります。
一つめは、届け物であるパイをかばったためにびしょ濡れになってしまったキキに対して、「まあ、ずぶ濡れじゃない」とドン引きして言い放ったところ。
二つめは、「お料理は大丈夫です」と伝えたキキに向かって、「だからいらないって言ったのよ」とうんざりしたように言うところ。
三つめは、「サインをお願いします」の返答に「私このパイ嫌いなのよね」ととどめを刺すように吐き捨てたところ。
この三つです。
ここまで、パイを届けようと依頼したおばあさんの思いやりやら、届けるまでのキキの頑張りやらを見ていたので余計にそう感じましたよね。
しかも、そのままバタンとドアを閉めてしまうので、なんとも冷たいというか上から目線すぎてびっくりします。
百歩譲って、少しおばあさんとキキ寄りの見方だったかもと思い直したとしても、やっぱり冷たすぎると感じてしまいます。
もうちょっと言い方があるんじゃないか、言う必要がないことじゃないかなどと思ってしまいます。
世間での否定的な声も、納得の反応といったところでしょうか。
少女のシーンへの宮崎駿監督の思いとは?
ほんの少しの登場ながら悪い印象しかない孫娘さんですが、このシーンには宮崎駿監督のある思惑があります。
それは、キキが仕事の厳しさや現実を知り成長するということです。
このニシンのパイの一件があって、キキは落ち込んで塞ぎ込んでしまいます。
それはキキが、荷物を配達したらみんなは当然感謝してくれると思っていたからです。
現実ではいつも感謝される訳ではないし、いろんなタイプの人と接します。
ありがとうだけではなくいろんな言葉をなげかけられるでしょうし、さまざまな場面や状況にでくわすでしょう。
それでも、お金を頂いているからにはプロとして荷物をしっかり配達しなくてはいけないというのが仕事というものです。
世間ではよくある一場面ですが、ここではまだキキは幻想を抱いています。
そういった仕事への甘さが浮き彫りになり、痛感させられた瞬間だったというわけです。
よく考えたら、荷物の配達員さんがめちゃくちゃずぶ濡れだったら、そんなひどい言い方はしないとしても、ちょっと「え⁉︎」と思ってしまうかもしれないですよね。
それに受け取りのサインを終えたあと、いつも「ありがとう」と言ってドアを閉めるとは限りませんね。
うっかり言いそびれたり、何かに気を取られててそのままピシャっと無意識に閉めてしまったこともあったかも。
要は、この孫娘さんの場面はそんなたわいもない日常にありがちな光景で、別にキキをいじめてるわけでもなんでもないということです。
だから、キキも仕事としてきっちりやるべき事なんだというのを理解する必要があったというわけですね。
ニシンのパイの女の子とトンボは友達だった!
そんな宮崎駿監督の思惑で、すっかり悪いイメージとなったこの孫娘さんですが、トンボとは友達のようですね。
車からトンボに「飛行船を見に行こう」と声をかけてくる仲間たちの中に、ニシンのパイの孫娘さんも一緒にいますから。
でも、問題の一件の日、この孫娘さんは自分の誕生日パーティーを開き、トンボたちは自分たちの飛行クラブのパーティーを別で開催していました。
そこから考えると、お互いにパーティーに誘ったり誘われたりもないようなので、親友とかっていうものではないようですね。
おそらく、同じ街に住む地元の仲間ということで仲良しなのだと思われます。
とはいえ、孫娘さんの印象が悪いうえに、仲間たちがトンボに声をかけてきたタイミングがキキとようやく打ち解けて話しているときでした。
なんて間が悪いんだろうとか、空気読むべきとか、ワルそうな仲間たちだなど、トンボの周りの仲間たちは良くない感想を持たれることが多いです。
エンディングでは女の子とキキが仲良く接するシーンも!
エンディングの中で、トンボのテスト飛行に付き合ってキキが一緒に空を飛んでいるシーンがあります。
その下を、車に乗ったトンボの飛行クラブの仲間たちが声援を送っているようなのですが、その中になんとあの孫娘さんもいるのです。
パイの一件やトンボに声をかけてくる間の悪さやらで、キキはあの孫娘さんを好ましいと感じていないと思っていたので驚きの光景ですね。
クライマックスで飛行船から落ちそうになっているトンボをキキが救出したことが、街の人に打ち解けるきっかけとなっていました。
なのでそれからのキキを描いたエンディングでは、キキが街の人と打ち解けている様子も見て取れます。
それを思えば、あの孫娘さんもキキを同じ街の仲間として見るようになったし、キキもまたそうだったのかなと思います。
他にも、同じ年くらいの女の子たちと楽しそうに話しているキキの姿も描かれていますね。
残念ながらそこにあの孫娘さんはいませんが、キキの中で何かが変わりひとつ成長した証のように思えます。
宅急便の仕事も、以前以上に楽しそうに行っている様子もありますから、その成長によって仕事への心構えにも変化があったのかもしれませんね。
気になる孫娘さんとは交わらないかと思いきや、トンボの広い交流関係もあって知り合えたようですね。
まとめ
みんなが感じたように、孫娘さんの初対面の印象は最悪なものでした。
類は友を呼ぶと言うのに、トンボとは全然イメージが違うタイプなので、友達であることがちょっと不思議な感じもありましたよね。
でも逆に、類は友というなら、本当はこの孫娘さんの方もそんなに悪い子ではないのかもしれないとも思えたのです。
そう考えると、少し触れていたようにパイの時の対応だって、誰もがずぶ濡れの知らない人がパイを持ってきたら同じようになったかもととれますし。
あと、お料理に対して言ったことだって。
まずあの優しいおばあさんが、孫娘が本当に嫌がっていることを繰り返し行うとは思えません。
孫娘さんの方がおばあさんの気持ちを考えて、本当はこのパイが苦手だということは伝えないでいるとも考えられます。
思わず困っている気持ちが乗っかってしまって、キキからすれば嫌味な感じにとれただけかもしれません。
どうしてもキキ寄りの見方で見てしまうと冷たく感じる態度も、実はそんなに変な意味ではないのかもしれませんよね。
ならば、トンボを通してエンディングでは知り合いになったようですし、あの時はこういうことだったんだよと案外話しているかもしれないですね。
キキも成長したようですから、街の仲間としてうまくやっていくのではないでしょうか。
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