「となりのトトロ」でちょっと気になる存在といえば、さつきとメイの父「草壁タツオ」です。
32歳で考古学者という設定のタツオは、ひょろっとしていて少しおっとり、だけど子供目線で会話できる優しいお父さんといった感じがします。
それまでの父親像でイメージする、ザ昭和の親父のような威厳たっぷりの雰囲気とは真逆な新しいタイプのお父さんです。
そんなニュータイプを表現するのに使った、あの棒読みチックなセリフの言い回しにはどうも賛否あるようです。
たしかに初めて聞いた時は、やはり少し驚いたというのか違和感みたいなものを感じたのは覚えています。
その、色んな意味でちょっと気になるタツオ役の声優や、選ばれた理由などについて迫ってみました。
トトロのお父さんの声優・糸井重里ってどんな人?
さつきとメイの父「草壁タツオ」役の声優さんといえば、糸井重里さんです。
今でこそテレビにもあまり出ていないようですが、当時かその少し前あたりは、コメンテーター的な感じでバラエティや情報番組でよくお見かけしたように記憶しています。
ですから、てっきりタレントさんかと思っていましたが、実は糸井さんは、群馬県出身のコピーライターさんなんです。
https://news.mynavi.jp/article/20131008-is02/
ジブリ作品でも、「火垂るの墓」や「魔女の宅急便」「千と千尋の神隠し」などのキャッチコピーの作成に関わっています。
もちろんこの「となりのトトロ」においても、「このへんな生きものはまだ日本にいるのです。たぶん」というキャッチコピーを作っています。
つまり本来は、制作側の裏方さんの一員としてジブリ作品に関わる人ということです。
https://芸能まとめ.net/2017/01/totoro_otousan/
トトロのお父さんに糸井重里が抜擢された理由は?
そんな糸井さんが、なぜか「タツオ」役として声を担当することになるわけですが、本当は最初プロの声優さんにお任せする予定だったようです。
ところが、宮崎駿監督が「タツオ役には糸井さんがぴったりだ」と推薦し、この大抜擢となったのです。
特に90年代以降は、主役級の声の担当もプロの声優さんは使わない傾向になった宮崎監督ですが、そこには理由がありました。
「普通のしゃべり」です。
宮崎監督いわく、「人間が会話するときのぞんざいな自然さと存在感を出すため、素人を加えることでより自然なアンサンブルが生まれるから」ということなのだそうです。
難しいことは分かりませんが、あの棒読みによって醸し出されている何かがあるというのは感覚的には伝わってきます。
つまり、棒読みのような素人の演技しきれないような喋り方が、父タツオには必要だったということのようです。
トトロのお父さんの棒読みには賛否両論
そんな「喋り方」はある意味斬新だったので、評価としては賛否両論、好き嫌いが分かれてしまうようです。
やはり「否」側の方たちの意見としては、その多くが棒読みで下手とか感情が伝わらないといったことを感じているようです。
ですが「賛」として受け止めた側の方たちは、その棒読み加減にむしろ味わいを見出しているようなのです。
おそらく宮崎監督が、素人声優の棒読みに求めていたものがそれなのでしょう。
父タツオは、お金のためとはいえ仕事に夢中で家の事はさつき任せだし、ちょっとポヤっとしていてやせ型のどこか頼りなさを感じる父親です。
でも、奥さんはもちろんのこと子供たちのことも大好きで、子どもとは友達のように話せる優しさもあります。
そんな不器用で完璧じゃない父親感は、感情表現をしっかり出せるプロではどうしてもイメージを追い越してしまうところがあるのでしょう。
だとすれば、糸井さんのタツオという父親の表現は、イメージ通りに十分伝わっていると言えます。
まとめ
糸井さん自身、タツオ役に抜擢されたときはびっくりしたかもしれませんし、なんでかと不思議に思ったかもしれませんね。
でも、個人的には「賛」側の意見なので、糸井さんがタツオ役で良かったんじゃないかなあなんて思います。
あんな感じのお父さんはリアルにいそうだし、田舎の雰囲気や考古学者のイメージやなんかと妙にマッチしているように感じますから。
それが、宮崎監督の言う自然なアンサンブルだとすれば、思惑通りその策にハマったということです。
なんにせよ、主人公ではないのにこうやってピックアップしてしまうほどなんだか気になる存在にしたのは、やはり宮崎監督のジブリマジックといえます。
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